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感想 劇場版『聲の形』(ネタバレあり)

前々からずっと見ようと思っていたのですが、ようやく映画『聲の形』を観ることができました。

聲の形の原作は読み切りを読んで以降リアルタイムで単行本を買って読んでいたので個人的に思い入れの深い作品でもあります。

ただ、僕は決して聲の形のファンではありませんでした。むしろアンチといってもいいでしょう。

"読み切り(≒原作1巻までの内容)より後のお話は蛇足であって、読み切りで完結、もしくは読み切りの内容を1~2巻程度に拡張して終わらせておくべきだった"と考える側の人間でした。少なくとも僕の周りでは聲の形は読み切りまでが一番良かったと言っている人が多い印象があります。僕もその中のひとりだったわけです。

読みもせずに蛇足だと騒ぐ読まず嫌いな人間にはなりたくなかったのでしっかり原作は全巻買って読みました。評価は低いままでしたが…。

 

そしてついに劇場版を観たわけです。観る前は「観終わったら酷評ツイートでもしてやろう」とすら考えていました。

しかし、劇場版『聲の形』を観終わった後の感想はめちゃくちゃ良かった、です。

 

話は少し逸れますが、読み切りが載り、連載が決定し、単行本が発売したときに僕は発売日に買いに行きました。

それから2巻が発売するまでは毎日毎日繰り返し読みました。将也の立場に自分が絶対にならないと否定できないリアリティや、周囲の人間の胸糞悪さ、そして何よりも将也のあまりの救われなさに当時は凄く惹かれていました。

けれど、2巻が発売し将也はある程度救われ、当時イジメていた女の子と仲良くなるという展開に一気にリアリティが消失してしまったかのような感覚を抱き、自分が聲の形に求めていたものとの差異を感じ始めました。

読み切り、そして1巻があまりにも好きすぎて2巻以降の内容に関して残念だとしか感じられずアンチと化してしまったわけです。

 

今思うと僕のこの漫画の読み方が間違っていたのかな、と思います。連載決定時に決まっていたことかどうかはわかりませんが、この漫画は全7巻です。

僕は1巻を繰り返し繰り返し読むことで自分の中で1巻をこの物語のピークに持ってきていました。

 

しかし、劇場版『聲の形』では将也がイジメを始めてから自殺未遂をするまでの描写にあまり時間が割かれていません。要はその部分はプロローグです。

僕は読み切りから入ったためか、プロローグをクライマックスと、あるいは物語のピークとして扱ってしまっていたのかもしれません。

けれど、劇場版『聲の形』ではそのような勘違いをすることがなく本題である2巻以降の内容に臨む事ができました。

これが僕が劇場版『聲の形』を楽しむことが出来た一番の理由だと思います。

 

他にも良かった部分はあって、1つ挙げるとすると原作のテンポの悪い部分が取り除かれていたことです。

原作7巻62話分を2時間ちょっとの劇場版に収めることから取捨選択は必須になることは当たり前ではあるのですが流石だなと感じました。

原作の映画制作のくだりなどは物語の展開上無理があるとは言えませんが、あまりテンポのいい内容ではなかったと思っているので、劇場版では丸々カットされていてよかったと思います。

終わり方も原作はなんとも言えない、打ち切りを疑われるような感じになってしまっていたのですが劇場版の方はスッキリしていて好感触でした。

 

原作2巻以降ではリアリティが消失した、と書いておいてこういうことを言うのも何なのですが、劇場版よりも原作の方がリアル寄りだとは思います。原作の少しグダったような展開が好きという人もいるでしょう。

ただエンターテインメントとして観たときには劇場版の方が勝るのかなぁと。

 

これは余談になるかもしれませんが、原作を読んでいて良かったと思っているところがあってそれは登場人物の予習が出来ていたことです。劇場版では将也が中心に話が進んでいくためか、将也が出てこない話があまりありません。なので、原作で将也のいないところで進んでいた話があまり描写されていないように感じました(一度観ただけなので体感ですが)。

ということは必然的に真柴などの登場人物は描写が少なくなってしまってどういう人物かすぐには掴みづらいところがあると思うのですが、原作既読だったおかげでそのあたりに困ることはありませんでした。

 

 

まとめると前述した通り、今回劇場版『聲の形』を楽しめたのは物語のピークを作り手側の意図と一致させることが出来たのが大きいと思っています。

原作に関しても、もしかしたら読み切りを読まずに全巻発売された後に一気読みしたら感想が変わったかもしれません。もう一度しっかり読み直そうとは思っていますが。

読み切りを読んだ後に原作を読み、つまらなかったと思った人にこそ観て欲しいと個人的には思いました。